腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検
乳がんでは、乳房周囲のリンパ節(主として
しかしながら実際には、乳がんは腋窩リンパ節を経由して段階的に進展するわけではないことから、最近は、腋窩リンパ節転移は手術後の治療方針を決める際に重要となるがんの進行度を表わす“信号”にすぎず、リンパ節に明らかな大きい転移がある場合以外はリンパ節郭清の治療的な意味はあまりないと考えられています。このため、不必要な腋窩リンパ節郭清を省くための研究が行われ、“センチネルリンパ節生検”という方法が見いだされました。
センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清の省略
センチネルリンパ節は、がん細胞が最初に転移するリンパ節のことをいいます
センチネルリンパ節とは、リンパ管に入ったがん細胞が最初にたどり着く腋窩リンパ節のことで、がんのリンパ節への転移を見張っているという意味で"見張りリンパ節"とも呼ばれます。センチネルリンパ節生検は、手術の前に乳がんの近くにラジオアイソトープあるいは色素を局所注射し、これを目印にして、手術中にセンチネルリンパ節を探しだして摘出し、このリンパ節にがんが転移していないかどうかを調べる(術中迅速診断)ことをいいます。
センチネルリンパ節生検で、
腋窩リンパ節転移の有無をかなり正確に予測することができます
センチネルリンパ節生検でがんの転移を認めない場合は、これまでの臨床試験の結果から腋窩リンパ節に転移がないと考えられるため、それ以上の腋窩リンパ節の切除は行わず(腋窩リンパ節郭清の省略)、がんの転移を認める場合にのみ、これまでどおり腋窩リンパ節の郭清を行う方法が試みられるようになっています(→参照)。この方法の長期的な治療成績(生存率)は世界的にデータが集積されている段階にあり、まだ結論は出ていませんが、多くの乳がん治療病院において臨床的な妥当性が認められています。
センチネルリンパ節をきちんと検査しないと、
リンパ節転移のある人を見逃す可能性があります
この方法を用いると、腋窩リンパ節に転移のない方(全乳がん患者の60%強)への不必要な郭清を避けることができ、 郭清に伴う弊害(上腕の運動障害や知覚異常、わきの下の浮腫や腕のむくみなど)を減らすことができます。 ただし、(1)きちんと検査しないとリンパ節転移のある人を見逃す可能性があり、偽陰性(他のリンパ節に転移がある)が5%程度存在すること、(2)検査法によって精度が異なり、色素法は簡便に行えるものの検査精度がやや劣り、検査精度の高いラジオアイソトープ法は装置への設備投資が必要で実施できる施設に限りがあること、などの問題点があります。最も信頼性の高い検査法は色素法とラジオアイソトープ法を併用する方法です。
センチネルリンパ節生検が適応にならない場合
すでにリンパ節転移のある人、あるいは転移している可能性の高い人などは、センチネルリンパ節生検は適応にはなりません
センチネルリンパ節生検は、次のような方は適応にならない、あるいは適応するのが難しいことがあります。
- 触診や画像診断でリンパ節転移がある、または疑われる方(これまで通り腋窩リンパ 節郭清を行います)
- しこりが大きく(通常3cm以上)、リンパ節転移が起きている可能性が高い方
- 乳がんの生検をすでに受けている方※1
- (術前化学療法を受けている方、特にリンパ節転移があった場合)※1
センチネルリンパ節生検をきちんと行って、腋窩リンパ節の郭清を省略することは、乳房を温存することと同様に大きなメリットがあることから、施行する施設が増えています。専門の病院では必ず行っています。